外反母趾について(機能面から考える)

 ヒールの高い靴を履く、先の細い靴を履く、これら靴のことに限らずライフスタイルの影響から、気をつけていないと外反母趾になってしまう危険性は高いものです。
 
 外反母趾に対処するための方法としては、
 @靴選びによって炎症を起こさないようにする
 Aサポーター・テープなどを使って形を矯正する
 B手術によって骨を削る

 などの方法が一般に知られているようです。

 それぞれの方法には一長一短あると思いますが、骨盤の矯正にしてもそうですが、「形」から入り、「機能面」を置き去りにしてしまうと、肝心なことを見失ってしまい、満足する結果にはたどり着かないのではないかと思います。

外反母趾の特徴(ビデオ) ○機能面でみる外反母趾の特徴
 左のビデオでも説明していますが、外反母趾の人の母趾は小趾側に曲がっている(外反)のもさることながら、内側に回旋(内旋)しています。
 ですから歩く際に母趾を真っ直ぐ縦に使って地面を蹴ることができません。足の指を内側に捻るようにすることでしか地面を蹴ることができないため、その捻れは母趾中足骨まで及び、母趾側全体が捻れるようになります。そのために母趾のMP関節は出っ張るだけでなく、歩くとき靴の内側を捻りながら擦ることになるので炎症が起こりやいと考えることができます。
 炎症を招かないようにするには、この内側への回旋が起こらず、地面を蹴るとき少ない力でも母趾が縦に使えるようになる必要があると考えます。
 テーピングやサポーターを使って、あるいは手術によって、MP関節の内側への出っ張りが減ったとしても、母趾の動きが回旋しているようでは、MP関節を出っ張らせる方向に力が働いていることに変わりはなく、また靴の内面を捻りながら擦る動作に変わりはないので、やがて炎症を招くようになるし、形としても外反母趾に向かって近づいていくことになってしまうと考えることができます。
 “長年の姿勢によって背骨が曲がってしまった”というのと同様に、私たちの体は機能に合わせて骨格を変形し筋肉の働きを変調させるという性質を持っています。例えば、つま先の細い靴を履いていたことによって母趾を正しく使うことができず外反母趾になってしまったとするならば、たとえ今、外反母趾だったとしても、正しく母趾を使うようにしていれば、やがて曲がっていた母趾は伸びてくるようになると考えることができます。MP関節の出っ張りも、機能に即して改善されてくるでしょう。
 そう考えるなら問題は、「どうすれば正しく母趾が使えるようになるか?」です。
 その面では特に“形にこだわっても意味はない”という結論になります。私たちの体は非常に精妙にできています。“代償性”という機能が常に働いています。たとえば、外反母趾のために母趾が地面を蹴ることができなければ、隣の指やあるいは指でなくMP関節面が地面を蹴るように自然と働くようにできています。ですから外反母趾の人の多くは足裏の2趾や3趾のMP関節付近にタコができるようになります。そこが母趾の働きを代わりに行うからです。
 また私たちの筋肉は、“働ける状態”であれば意識しなくても正しく働いてくれます。この場合、母趾の腹側の筋肉(長母趾屈筋と短母指屈筋)がしっかりしていて連携して働ける状態にあれば、「母趾を正しく使ってしっかり歩く!」と意識的にならずとも、そのように働いてくれます。
 そのためには
 @MP関節がしっかりしていること、
 A母趾中足骨も母趾の指も内旋していないこと
 の二つが必要条件になります。

○歩き方に見る特徴
 右のビデオは外反母趾に対する施術をする前と後の歩き方を比較したものです。
 このモデルは外反母趾における炎症だとか痛みといった症状があったわけではありませんので、一見施術前でも歩き方がおかしいとは見えないかもしれません。しかし、母趾が内旋せずに正しく使えるかどうか、という視点で注意して見ていただくと、その違いがわかると思います。
 ちょっとした差にしか映らないかもしれませんが、歩くことは日常たくさん行うことですから、このちょっとした差、力の及ぶ方向性の違いが、後々大きな違いとなって現れてくることになります。 
 施術前の映像では、母趾(のMP関節部)が着地してから地面を離れようとする際、内側に回旋しているのがわかると思います。そして母趾をはじめ足の指は地面を蹴る目的ではほとんど使われていないことがわかると思います。
 施術後の映像では、母趾の外反の形が目に見えて良くなったわけではありませんが、その使い方が変わったのがわかると思います。足の使い方も進行方向に向かって真っ直ぐに近づき縦になりました。母趾をはじめ他の指が地面を蹴っていると言えるほどではありませんが、そのように動こうとしているのが感じられます。このような状態で歩くことを続けていると、やがて指が地面を蹴れるようになり、その動きに合わせるように指の形も変わっていくことでしょう。

ゆめとわでの施術
 すべての施術がそうですが、ここではテープやサポーターなどの装具を使うことはありません。基本的に素手による施術のみです。そして、形を整えるために関節や骨を物理的に動かすこともしません。
 触診による検査を細かく行い、どのポイントを改善すれば全体が良くなるかというポイントを探し出すのが技術です。そして後は、そのポイントにしばらく手をあてがい、そのポイントが改善されるのを促すだけです。
 ビデオのモデルの場合、両足が外反母趾でしたが、この時には左足の方が関節も筋力もしっかりしていませんでした。しかし、原因を探っていくと最終的に右足の短母指屈筋の端に存在する筋肉の変調が施術点となりました。この変調を整えると、左母趾のMP関節も指もしっかりしますので、下の写真のように、そこにしばらく手指をあてがいました。
 そして歩いてもらった映像がビデオの施術後です。


 歩く動作において母趾に関係する主な筋肉は短母指屈筋と長母趾屈筋です。この二つの筋肉が絶妙に連携するので着地から指で地面を蹴るという一連の流れがスムーズに行われます。今回の場合、短母指屈筋に変調があったため、その場所の筋肉がしっかり働くことができませんでした。それが原因して母趾を縦に使うことができなかったのです。このような状態のときは、意識的に母趾を縦に真っ直ぐ使おうとしても、なかなかできないのです。そして、この短母指屈筋にある弱点を修正すると、短母指屈筋と長母趾屈筋の連動がスムーズにいくようになりますので、別に意識していなくても、自然と母趾は縦に使われるようになり、“親指の腹をつかって地面を蹴る感覚”が感じられるようになります。
 そして、こういう正しい動作を行っていると、指や関節の形もそれに即して変化するようになると考えています。少し時間はかかるかもしれませんが、もっとも安全で理にかなった外反母趾改善の方法ではないかと思っています。

 また筋肉の性質的にみると、長母趾屈筋は体の芯に関係する筋肉です。この筋肉がしっかりしていないと体の芯がしっかりしなくなります。母趾の腹をしっかり使って歩くことは長母趾屈筋を鍛えるという意味からもとても大切です。
  

ゆめとわホームページへ