2011.12.02
冷え・むくみ・血行不良について

 日毎に寒さを感じる季節になりました。これからしばらくの間、冷えや血行不良で悩まされる人も多いと思います。
 “冷え”と“むくみ”と“血行不良”は関係が深く、身体の一つの状態がすべての症状を招くことが多いといえます。
   血液循環が悪いので、血液(動脈血)が末梢まで十分に届かず、手先や足先が冷えてしまう。
   血液循環が悪く静脈やリンパの流れが停滞するため、老廃物や水分が滞ってしまう。

 以上のように考えることができるかもしれません。
 ただし、他にも原因があると思われますので、今回はそれぞれについて改めて考えてみたいと思います。

@血行不良=血液循環の停滞 
 全身の血液循環は二つに分けて考えることができます。
 一つは動脈血の循環、そしてもう一つは静脈血とリンパの循環です。
 動脈は主に心臓の働きによって血液が巡るのですが、その他に自律神経、内臓の働き、血圧などがからんでくるといえます。
 心臓の働きを活発にするのは自律神経のうち交感神経の方です。私たちの身体は日中は交感神経が優位になるようになっていますから、心臓は活発に働いてくれます。ところが夜中になると副交感神経が優位になります。食べたものを消化吸収し、昼間の疲労を回復するためです。そうなると心臓も心拍数を下げ休息に入りますので、血圧も下がり、心臓の働きによる血液循環の量は減ることになります。夜中は、栄養の消化吸収に関わる小腸や十二指腸が活発に働いていますので、そこに血液が集まります。つまり、夜中の血液循環は小腸などの働きが関与しているということです。
 東洋医学(中医学・漢方)の考え方では、心臓と小腸は表裏の関係にあります。なるほど、うなずけるところです。実際のところ、足裏の反射区をみますと、血液循環が悪く、お腹が冷えている人の小腸反射区はゴツゴツしていて刺激を与えるととても痛がります。
 ゆめとわでは、足リフレのコースを選ばなくても、整体コースに足裏のもみほぐしを少し入れることがあります。十二指腸と小腸の反射区は血液循環に大切だと考えているからです。

 次に静脈とリンパの循環ですが、やはり一番大切なところは鎖骨と肋骨の間にある鎖骨下静脈の流れだと考えられます。鎖骨下静脈にはリンパも合流しますので、ここの流れが停滞すると全身の静脈もリンパもともに停滞することになります。そして鎖骨下静脈の流れが悪い人がたくさんいます。
 鎖骨下静脈は鎖骨と第1肋骨の間を通っていますから、単純な例ですが、鎖骨が下がっていたり肋骨が上がっていたりするとそれだけで流れが悪くなります。パソコンをする人が増え、その両肩が前にでて猫背のようになる姿勢から鎖骨が下がって内側に入っている人が増えました。さらに、お腹の冷えとも絡むのですが、腹筋の働きが悪く胸(肋骨)が上がってしまっている人もたくさんいます。そんな人はそれだけで鎖骨下静脈の流れが停滞します。このことは“むくみ”のところでもう少し説明します。
 その他に、静脈もリンパも最終的に心臓に戻るのですが、ともに周りの筋肉の働きによってその道を進みます。ですから冷えなどによって筋肉の働きが落ちると、それらの流れも落ちてしまいます。
 また、手首・肘・股関節・膝・足首といった関節に捻れなどがあると、そこで流れが停滞してしまうかもしれません。

 当然のことですが、動脈と静脈はつながっていますので、静脈が停滞すれば動脈が行きたくても行けないという状態になります。それでも心臓は血液を循環させようとするので、血圧を上げることにつながる可能性もあります。
 筋肉の働きが悪く、あるいは鎖骨下静脈の通りが悪く、静脈、そして動脈が停滞してしまうために血圧が高くなるという道理も十分に考えられることだと思います。

A“むくみ”はリンパと静脈の停滞
 心臓や肝臓や腎臓などの内臓が不調であったり病気であったりすると全身にむくみが生じますが、ここではそれは除外して考えます。
 “むくみ”とは静脈やリンパの流れが全身性で、あるいは部分的に停滞するため、細胞が出した老廃物や炭酸ガス、不要な水分がうまく心臓に戻ってこれないために生じると考えることができます。
 静脈やリンパが停滞するのは二つの理由が考えられます。ひとつは筋肉の働きが悪いことです。もう一つは関節が捻れていたり、股関節(鼡径部)や脇の下(腋窩)など狭いところで停滞してしまうことです。鎖骨下静脈での停滞はこちらです。

・静脈もリンパも筋肉の働きが悪いと停滞する
 動脈は主に心臓の拍動を動力として全身を巡ります。しかし静脈やリンパを巡らすのに心臓のような働きをするものはありません。静脈もリンパもその周りの筋肉が収縮したり弛緩したりする作用を利用して心臓に戻るように進みます。動脈が能動的であるのに対して、静脈やリンパは受動的であると言えるかもしれません。
 ですから、周囲の筋肉の働きが悪いと流れが停滞してしまいます。長い時間同じ場所で立ち続けているような仕事をしていると膝から下がむくんでしまうことは多くの人が経験していると思います。
 “筋肉の働きが悪い”というと“では、歩くなど運動をすればいいのか”と多くの人が連想すると思いますが、整体的な観点では、運動する・しないに関わらず、筋肉自体が変調しているとやはり流れが停滞してしまう、となります。筋肉が変調しているというのは、疲労や冷えなどによって筋肉にうまく収縮することができない部分が残っているということです。するとその部分の静脈はうまく血液を送ることができなくなってしまいます。そんなことが全身のあちらこちらで起こっている可能性はたくさんあると思います。
 
 例えば“膝から下ばかりがむくむ”のであれば膝の関節がおかしい(変位している)と考えることができます。足首より先なら足関節が変位していますし、手ばかりがむくむのであれば手首が変位していると考えることができます。痛みや苦痛を伴わなくとも「なんとなく違和感がする」のであれば、関節は捻れや変位を起こしています。それは整える必要があります。
 また、一日中座ってばかりいるような仕事をしていると股関節(鼡径部)がこわばってしまい、そこでの流れが悪くなります。下半身ばかりがパンパンしている人はこんな人です。
 そして鎖骨下静脈です。静脈が最終的に心臓に戻るルートは二つです。一つは下半身や骨盤および内臓の静脈を集めて心臓に戻る下大静脈です。もう一つが鎖骨下静脈です。鎖骨下静脈は一見すると、頭部や上肢(手や腕)の静脈と全身のリンパを集めて心臓に戻るルートですが、静脈のルートをよく観察しますと、腹部や背部、そして下半身の体表部の静脈まで鎖骨下静脈へのルートを持っています。下大静脈は主に内臓の静脈を、そして鎖骨下静脈はそれ以外の全身の静脈の通り道なのかもしれません。
 実際のところ鎖骨下静脈の流れをよくする施術を行いますと、まずはじめに足裏や足先のむくみから良くなっていきます。

B“冷え”=骨格筋や内臓の働きがポイント
 「血液の流れが悪いから冷える」
 確かにその通りなのですが、そうでない場合もあります。つまり、血液循環は良いのだけれど冷えてしまう場合です。蒼白くて冷たい素肌を触ると、確かに動脈血が巡ってきていないことが感じられます。しかし赤味があるのに冷たくなっている手や足をみることがあります。あるいは冬場の登山などで、長い時間冷たい環境にいますと、休憩所に入り暖をとってもなかなか身体は温まってきません。手先などは血液が巡ってすぐに赤くなるのですが、体温が上がってこないのです。このように血液循環と体温とは関係はしていますが、直接的な関係ではないようです。
 
 ある調査によりますと、安静時の体熱産生では、総熱量の38%は骨格筋が産生していて、次いで肝臓と消化管(胃・小腸など)で20%、腎臓・脾臓・心臓・脳という順で続くようです。つまり、体熱のほとんどは骨格筋と内臓の働きでつくられているということです。そして、骨格筋や内臓がしっかり働くためには動脈血が必要ですから血液循環が大事になってきます。
 ところで筋肉(骨格筋でも内臓平滑筋でも)がしっかり働くためには熱エネルギーが必要です。暖をとる、風呂に入って温まる、それはとても大切なことです。
 また、筋肉に変調があると、血液が巡っても、温めても筋肉は上手く働くことができません。
 ここでの変調とは“疲労”と解釈していただいても良いと思います。疲労などによって筋肉にハリがなくなり伸びきってしまったような状態です。休息や疲労を回復するためのマッサージなどが必要です。

 冷えで悩んでいるのは女性の方が多いようですが、筋力が弱く、胃腸などの働きが今ひとつ、という傾向があるようです。これはまさに体熱をたくさん産生する骨格筋や内臓の働きが弱いことを反映しています。
 私たちの身体はまずは生命を維持することを優先します。ですから内臓の働きが一番大切だというシステムになっていると言えます。
 「どこが冷えますか?」と尋ねますと、多くの人が手先、あるいは足先と答えます。ですから皆さんは手や足が冷えないような工夫をされています。“手足が冷えるからお腹を温めよう”と考える方はあまりいないでしょう。しかし、お腹が大事です。お腹が冷えて内臓の働きが悪くなると命を脅かす病気になる可能性が出てくるので、身体は手や足から熱を奪ってでもお腹にまわそうとしているのではないでしょうか。
 ここでは、まずお腹を温めます。そして腹直筋を調整します。それから局部的に冷えている、例えば手だったり足だったりを整えます。すると効率よく身体が温まってきます。

C冷え・むくみ・血行不良に対して
 この3つの症状はどれも注意しなければいけないのですが、あえて一番を申し上げますと「冷やしてはいけない」です。特にお腹の冷えには十分に注意すべきです。若い女性のすべてがお腹が出てしまうような短い洋服を着ているわけではないでしょうけど、彼女たちに増えてきた婦人科系の病気は、お腹の冷えと関係するのではないでしょうか。
 骨格筋が熱をつくるのですが、筋肉は冷えにとても弱いです。私は仕事で肩こりを揉みほぐしたりするのですが、冬場になって朝一番のお客さんに対してはとても苦労します。手に力が入らないからです。施術をする5分ほど前には熱めの湯に手を入れて温めるのですが、手だけを温めても駄目なんですね。お腹が冷えているわけですから‥‥。
 身体が温まってくると筋肉がしっかりします。すると静脈やリンパの流れが良くなります。むくみも取れてきます。すると動脈も細部までよく巡るようになって益々筋肉がしっかりします。するとさらに静脈やリンパがよく流れて、動脈の巡りが良くなって心臓への負担も減り‥‥。こういう良い流れの循環になると身体は快調になります。
 
 冷えで苦しんでいる人は、寒い日に外出することは苦痛で嫌かもしれません。部屋を温め、手足が冷えないように靴下を重ね履きなどして過ごしているかもしれませんが、それでは一向に改善の道には進みません。
 ペットボトルに熱めの湯を入れタオルを巻いて“湯たんぽ”のようにしてお腹(おへそのところ)に乗せ、20分くらい温めると身体が楽になると思います。そしたら軽い腹筋運動や体操などをしてもよいでしょう。全身が温まったら散歩などに外出してみてはいかがでしょうか。そうすればお腹もすいて食欲も増し、胃腸の調子も良くなるのではないでしょうか。
 筋肉をしっかりさせることが体熱を生み出す第一歩です。特にふくらはぎにあるヒラメ筋は熱をたくさんつくる筋肉のようです。ヒラメ筋は抗重力筋でもあり、地味ですがジッといつも頑張っていてくれます。歩くことによって鍛えることができます。

 それでも例えば「ふくらはぎから足にかけて外側だけが冷たい」など局所的に冷えやしびれなどがある場合は、骨格を整える必要がありますので、一度ご相談ください。 

ゆめとわでの対応
 筋肉の変調を整え、骨格を整えることで“冷え・むくみ・血行不良”に対応するのが整体としての役割です。
 実際にどうしているかを申し上げますと、まずお腹や胸を整え呼吸が良くなるようにして、次に腹直筋を整えながらお腹の冷えを改善します。そうすることで全身が温まってきます。
 そして冷えが残った部分、例えば右手の人差し指と親指、という細かいところをみて、そこが温まるように骨格を調整します。
 もちろん人によって様々に細かく対応しますが、基本線はだいたいこんな感じです。

 そして大事なことは、「どうして冷えるのか?」冷えやむくみや血行不良の原因を探し出し、それを指摘するとともに日常生活の中での対策について考えます。
 そうすることで、それほどつらい思いをしなくても、この冬を乗り切れるようになるのではないかと思っています。

 どうぞ、お気軽にご相談ください。

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