2010.06.13
ひざ関節の不調や痛みについて

 「膝が痛い」という自覚症状がなくとも、膝の関節が歪んでいる人はとても多くいます。
 腰は全身の要ですから、腰が悪いと痛みだけでなく、全身に力が入らない、集中できない、何かいつもおかしい気がする等々、不快さが自覚されます。しかし膝が少々おかしいだけでは日常生活にそれほど支障もでないので、「そのうち良くなる」と思い、やり過ごしてしまう人がほとんどかもしれません。
 ところが座ったり立ったりすると痛みを感じたり、正座ができなくなったり、水が溜まったりという症状がはっきりと現れる段階になると、全身の体重を支える場所ですから、突然歩くこともままならなくなったりしてしまいます。そして、その段階になって湿布をしたり、病院に行ったところですぐには良くならない、というのが実情かもしれません。
 関節リウマチなどの病気を除けば、多少骨が変形していようと、軟骨が減っていようと、靱帯に傷があろうと、関節をしっかり整えれば症状は軽快するものです。
 今回は膝の関節について考えてみたいと思います。

 膝は骨がとてもずれやすい関節です
    @直接的には太ももの筋肉の影響を受けますが、手の指先がとても大切
    A腰痛の原因:長く歩くと腰が痛くなる‥‥膝の問題かもしれません
    B膝から下が“むくむ”、“だるい”ときは膝関節がずれているかもしれません
    C肩や肘の関節、腱鞘炎なども膝と関係します

@膝は太ももの筋肉の影響を受けますが、手の指先がとても大切
 膝の関節は太ももの骨(大腿骨)とスネの骨(脛骨・腓骨含む)とお皿の骨(膝蓋骨)でできています。そして膝関節の変位を考えたとき、ほとんどの場合、大腿骨に対して脛骨がどうなっているかということになります。
 膝関節の不具合でよく聞かれる言葉に、じんたい(靱帯)損傷とか半月板損傷、軟骨損傷というのがあります。確かにそれらは膝関節を成り立たす上で大切な要素ですが、それらにまったく損傷や不具合がないのに膝に不調や痛みを感じる場合があります。それは大腿骨に対して脛骨が捻れていたり、ずれていたりするからです。そしてその原因は、膝関節を安定させている筋肉や筋膜などに変調があるからです。整体的には、これら筋・筋膜にある変調を整えることがとても重要です。

 骨盤や大腿骨から出て関節をまたぎ、脛骨や腓骨につながっている筋肉は9つあります。
 膝関節の内側面に影響を与える筋肉には、大腿四頭筋の中の内側広筋、縫工筋、薄筋、半腱様筋があります。これらの筋肉の中のどれか一つでもゆるみますと、脛骨を内側に引っ張り安定させる力が弱まりますので脛骨は外側にずれるか捻れる(外旋)ことになります。するとその筋肉以外の他の筋肉には負担がかかりますので痛みを生じることが考えられます(関節の内側が痛む)。あるいは、これらの内側の筋肉のどれか一つでもこわばる(収縮しっぱなしの状態)と、脛骨を内側に引き寄せるか内旋させることになります。すると膝関節の外側の筋肉が引っ張られ負担がかかりますので、関節の外側に痛みが生じることになります。
 大腿四頭筋の中の外側広筋、腸脛靱帯(大腿筋膜張筋)、大腿二頭筋は膝関節の外側に関係する筋肉ですが、内側の筋肉同様、それらの中の一つでもゆるんだり、こわばったりしていますと、脛骨がずれたり捻れたりしますので、負担の強いられる筋肉が発生し、それが痛みを発することになります。
 大腿四頭筋の中の大腿直筋や中間広筋、そしてふくらはぎの筋肉(腓腹筋)は脛骨の前後のずれや関節の安定に関係します。正座をするとき膝のすぐ上やお皿(膝蓋骨)のすぐ下が突っ張ったり痛んだりするのは、大腿直筋か中間広筋が変調している場合が多いです。

手の指先がとても大切
 細かいことは省略しますが、臨床的に、これら膝関節に関係する筋肉と手の指先とはとても深い関係があると言えます。母指(親指)は外側広筋や腸脛靱帯と関係します。示指(人差し指)は大腿二頭筋、薬指は中間広筋、小指は内側広筋・大腿直筋と関係します。
 私たちは日常生活でたくさん手を使います。手がこっていたり、指先が捻れている人はたくさんいます。
 例えば仕事でパソコン入力をたくさんしている場合、スペースキーを叩くとき、よく観察しますと母指を捻らせて叩いることがわかります。マウスでクリックする動作は示指先を捻らせる動作です。一つ一つの動作にはそれほど力は使いませんが、それでもその動作がとっても多くなると、やはり指先は疲労して特に第一関節は捻れます。
 ペンで字を書く、紙をめくる、ネジを回す、包丁を使う‥‥、私たちはそれぞれいろんなことをしていますが、同じ動作を長い時間繰り返せば、それは筋肉や筋膜の疲労につながります。
 私の場合、揉みほぐすお客さんが多くなる日はとてもたくさん母指と示指を使うわけですが、すると次の日、膝に違和感を感じることが多くなります。歩くことも辛くなることがあります。
 一般的なイメージでは、手先と膝とはつながらないかもしれませんが、実際にはとても深い関係があります。

A腰痛の原因のひとつ‥‥長く歩くと腰がつらくなる、足がしびれるなど
 腰痛を起こす原因にはいろいろありますが、膝の関節がしっかりしていないこと、安定していないことも原因になります。座っていたり、寝ているときは特に痛みは感じないが、しばらく立ち続けていたり、歩き始めて何分かすると腰が痛くなったり、足がしびれだしたりするときは膝の関節を確認する必要があります。
 膝の関節が安定していないため、立ち続けたり歩くなどの動作で膝に負担がかかると、関節に関連する筋肉が通常以上に頑張って仕事をしなければならなくなります。歩き始めて数分は筋肉が頑張っていられるのですが、やがて疲労し頑張れなくなります。すると負担に耐えられなくなって腰周りの筋肉に負担がかかるようになり腰痛になったり、足(下肢)にしびれをもたらしたりすると考えることができます。
 こういった症状は「脊柱管狭窄症」の症状と似ていますので、「やがて手術が必要になるのかなぁ?」と考える人もいますが、膝や足首の不安定さが原因の場合もありますので、一度膝や足首の関節を確認することをおすすめします。

関節の痛みや腫れと脛骨のズレ
 右の写真で(A)は大腿骨と脛骨の関係が正しく安定している時のイメージです。
 (B)は太ももの内側の筋肉のどれかがゆるんだり、外側の筋肉がこわばった時の状態で、脛骨が大腿骨に対して外側に回旋(外旋)した時のイメージです。このとき、膝の内側の筋肉や筋膜は(A)に比べて引っ張られることになりますので、そこに違和感や痛みを感じるようになります。このような状態で放置しておき、さらに歩くなど負荷のかかることを続けていますと膝の内側は炎症して腫れてきます。
 実際のところ、程度の差こそあれ(B)のような状態の人はたくさんいます。膝の内側の筋肉に力と柔軟さがあるうちは、どれか一つくらいおかしくなっても他の筋肉がカバーしてくれますが、疲労が重なったり、筋力が弱りカバー能力が無くなってしまうと症状が現れると考えることができます。
  (C)は(B)とは反対の状態です。
 仰向けになって寝たとき自分の足先がどうなっているか、確認してみてもよいかもしれません。

 右は膝関節において脛骨の前後のずれについてのイメージ図です。
 上記の脛骨の外旋・内旋にあわせて脛骨が前後、特に後ろにずれていることが多々あります。太ももの前面には大腿四頭筋という大きな筋肉がありますが、その中に中間広筋という地味な筋肉があります。しかし、関節の安定に関してはとても重要な役割を担っています。さらに座った状態から立ち上がるとき、階段を降りるとき、膝を少し曲げた中腰の状態を保つときなど、この筋肉がしっかりしてないと力が入らず他の筋肉に負担がかかるためやはり痛みなどの症状が発生します。
 膝から下がいつもだるい、膝の裏が腫れぼったい、座ったり立ったりするのがきつい、といった状態なら脛骨が前か後ろにずれている可能性が高いです。

B膝から下が“むくむ”、“だるい”ときは膝関節がずれているかもしれません
 仕事上立っていることが多いので夕方になるとふくらはぎがパンパンになってしまう、パソコンの前に座り続けてばかりいるので夕方になると下半身がむくんでしまう、しかし朝はそうでもない、という場合は血液やリンパの循環が一時的に悪くなっているという状態だと考えることができます。体操とか、グッズとか、リフレクソロジー(足マッサージ)などでむくみを軽減することができると思います。
 しかし“常に”むくんでいたり、だるいという状態で、リフレクソロジーもその場限りという状態であるならば、それは関節が変位している、体がゆがんでいる、ということの可能性が高いでしょう。
 腎臓や心臓や肝臓といった内臓系の問題以外で“むくむ”ときは、血液・リンパの循環について考える必要があります。全身性のむくみに関しては鎖骨下静脈の流れについて確認する必要がありますが「下半身だけ」とか、「膝から下が特に」という場合は股関節(鼡径部)や膝関節の状態について確認することが必要です。
 私たちの体は本当に精妙にできていますので、脛骨がわずか1oずれているだけでも、そこで循環が悪くなってしまいます。実際、整体で膝や股関節などの骨の関係を整え、筋肉の状態を整えますと、スーッとむくみはとれていきます。

C肩関節の不具合(五十肩)・肘の痛み・腱鞘炎とも関係する
 “まさか!”と思う人がほとんどですが、膝関節と肩関節、膝関節と肘や手首とは関連性があり影響し合います。
 一つの例ですが、膝から下の骨(脛骨)が外旋しますと膝の内側にある筋肉(薄筋)がこわばります。すると筋肉連動性のつながりで胸にある小胸筋もこわばります。それによって肩甲骨が前面の方に引き寄せられますので、肩が前に出た状態になります(仰向けになって寝ると肩が浮いた状態)。すると腕を上げることや肩を回すことがきつくなる“五十肩”の症状が現れます。
 また、中間広筋は上腕三頭筋と連動しますので、中間広筋の変調は腕の骨(尺骨)を動揺させ、肘や手首に影響を与えます。肘の痛みや腱鞘炎のような症状が出ることもあります。

変形性膝関節症など、骨などに変形やゆがみや損傷がある場合
 骨そのものが変形していたり、軟骨が無くなっていたり、構造物の何かが欠落していたりするものを整体で何とかすることは無理かもしれません。しかし今より、より快適な状態にすることはできます。
 階段の上り下りに困難を感じていたものを自力でできるようになるかもしれません。膝が曲げられず、椅子やソファーが無いところでは座ることもままならなかったものが、正座は無理にせよ畳や床に座る生活ができるようになるかもしれません。
 私たちの体は使わなければどんどんその部分が退化していくようにできています。膝が悪いからといって歩かなければ足腰の筋肉はどんどん弱っていくことでしょう。筋肉だけでなく骨も同様に考えることができます。変形性膝関節症だからといって、負担のかからないことばかりを考えていると、ますます変形していくでしょう。
 しかし反対を考えると、使っていけばそのように筋肉も骨も変化していくということでもあります。よく歩いていれば、効率良く歩けるように組織が変化していきます。変形していたものが元の状態に戻るように変化していくことでしょう。
 痛み止めの注射をしても、ヒアルロン酸を注射しても、水を抜いても、それらは膝を改善させる治療方法ではありません。対症療法であり、一時しのぎの方法です。
 それはそれとして、関節の歪みを整え、筋肉に負担がかからないように整える方法を併用することで、よく歩くことがすぐに実現できるのだと思っています。そこに整体の意味があります。

「膝に水が溜まる」ことについて
 膝に水が溜まるのは、体が炎症を緩和しようとする自己防衛能力の現れだと思います。つまり炎症しているということです。ある程度水が溜まると整形外科で水抜きし、そしてまた溜まると水抜きをするということを繰り返している人もいます。最初は3ヶ月に一度ぐらいの割合だったものが、少しずつ間隔が短くなり、頻繁に水抜きをするようになる人もいます。その人もその人だけれど、そのお医者さんもどうかと思ってしまいます。
 上記で説明しました関節のずれを解消していくとそれほど長い期間をおかなくても腫れや水は減っていきます。炎症を改善する最初の一歩は変異している関節を正位に戻すことからだと思います。
 実際に、数日おきに水抜きしていたものがだんだんと間隔が伸びていき、やがて水抜きしなくなったという人もいます。この人はほとんど膝を曲げることができない状態でしたが、120°くらいまで曲げられるようになり、その頃には水抜きが必要ではなくなりました。

ゆめとわでの対応
 肩こりは揉みほぐすことによって症状が軽快しますが、膝の問題は揉みほぐしてどうなるものでもありません。また、整形外科などでのリハビリでは大腿四頭筋を中心に筋肉を鍛えることを主眼にしているようですが、どれだけの効果があるのでしょうか。
 整体的な考え方として「痛いことはしてはいけない」というのがあります。これは、例えばストレッチ運動で筋肉を伸ばすとき、「伸びないものを無理に伸ばそうとしてはいけない」というのと同じです。これについては実際、とても多くの人が誤解し、間違った考え方をしています。「もうちょっと頑張れば伸びるのだ!」と思ってしまうのですね。正しくは、筋肉が「楽に伸びるようになるようその他を工夫する」ことです。その工夫の一つは息を吐きながら行うことです。伸びづらい筋肉を伸ばそうとすると、それはより縮む方向へと反応してしまうのです。
 さて、膝の問題は大腿骨と脛骨の関係を正すことと膝周辺の筋肉の変調を解消することが主体となります。まったく痛みを感じるような施術は行いませんし、関節が整い安定すると、とても楽に動かすことができるようになることがその場で実感できるでしょう。あとは、どうして膝が不安定になったかの原因を改善していくことです。
 ほとんどの場合、施術する部位は、手指、足首周辺、顔、お腹です。肉離れや打撲などケガをした以外では、ほとんど膝周辺の筋肉に施術することはありません。膝関節を直にいじることもありません。ですから、骨が変形していても、靱帯や半月板や軟骨が損傷していても何の問題なく施術は行えます。

 中間広筋のことは上記でも説明しましたが、この筋肉は膝を支える要となる筋肉です。この筋肉の働きが弱いと体重を支えることがきつくなってしまいます。ですから、この筋肉だけは鍛えることを要望します。
 そして中間広筋と噛む筋肉(咬筋・側頭筋)は連動しますので、噛む筋肉が弱ければ中間広筋は強くなりません。そのことを改めてご指導申し上げるようになると思います。

 噛むことにも関係しますが、膝に問題を抱えている人はやはり高齢者に多いです。膝が悪いと歩くことがままならなくなり、心も落ち込んでしまうというパターンになりがちで、お医者さんに「歳だから」といわれて半ば“仕方がない”みたいな対応をされますと改善に向けての希望がしぼんでしまいがちになるかもしれません。しかし、膝の問題は皆さんが思うほど難しいものではありません。是非一度ご来店ください。

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