2010.11.23
首のトラブルについて

 最近になって「首こり」という言葉が少しずつ聞かれるようになったかもしれません。多くの人が「肩こり」だと思っているものは、実際には「首の筋肉のこり」である場合がほとんどです。
 首や肩のこりは、もみほぐしてしまうのが一番速い解決方法だと思いますが、もみほぐしても解決しないものもあります。
 「首が回しづらい」「横を向くと首筋や背中が痛くなる」「下を向くと首筋が突っ張る」など、首を動かすことによってもたらされるトラブルはもみほぐしても解決しないと考えた方がいいでしょう。その他にも「左か右のどちらかが常におかしい」とか、ピンポイントで「ここがいつもつらい」というような場合も、もみほぐす対象ではないと考えられます。

 代表的な首のトラブル(病的症状を除いて)
  ・首を回すとゴリゴリいう、横を向くと首筋が突っ張り痛い、など ‥ タイプ@
  ・首を動かすと肩甲骨のところや背中が痛む ‥‥ タイプA
  ・常に気になるポイントがあり、触ると痛いか、気持ちが良い ‥‥ タイプB
  ・ムチウチの後、スッキリしなかったり、痛かったりする ‥‥ タイプC
  ・ストレートネックで首と肩がガチガチにこる ‥‥ タイプD
  ・首のすわりが悪い感じがする ‥‥ タイプB
  ・寝違え、首が動かせない ‥‥ タイプ@、A


タイプ@‥斜角筋の変調によるトラブル
 首の骨と肋骨をつないでいて、首の運動や呼吸時に胸郭(肋骨)を上下させるのを補助する働きをする筋に「斜角筋(しゃかくきん)」というのがあります。
 斜角筋は前斜角筋・中斜角筋・後斜角筋という左右にそれぞれ3本ありますが、いわゆる「首こり」の際、揉みほぐしの対象になる筋肉です。
 例えば首を回して右を向いたとき、あるいは首を右に倒したとき、左側の首筋が突っ張ったり、痛かったりするようであれば、それは左側の中斜角筋がこわばっていて伸びることができないからです。
 また、右を向いたとき右側の後の首筋が突っ張ったり痛かったりするようであれば、それは右側の後斜角筋がこわばっているからです。
 斜角筋は頚椎(首の骨)と一番上と二番目の肋骨を結んでいますので、それらの肋骨が歪んでいたり下がっていたりしますと変調してこわばります。ですから、斜角筋の変調によるトラブルを解消するためには、肋骨を正しい位置に整えなければなりません。

 また、斜角筋の中の前斜角筋は噛む筋肉(咬筋)と連動しますので、片噛みの癖や歯ぎしり・噛みしめの癖によって影響を受けます。奥歯で噛むことが少なく咬筋がゆるんでしまうと前斜角筋もゆるんでしまい、肋骨は下に下がってしまいます。すると中斜角筋・後斜角筋が張ってこわばりますので、同じような症状を招きます。
 さらに、お腹が冷えるなどして腹筋の働きが悪くなり、みぞおちが硬くなったりしますと肋骨(胸)を下に下げたりしますので、やはり同じような症状を招くことになります。

 斜角筋は揉みほぐすことによってパンパンになった内圧を減らすことができます。つまり首こり、肩こりを軽減することはできます。しかし、それと筋肉の変調を解消することとは別の話です。ですから、こりを軽減しても首を回すと痛むとか、突っ張る、あるいは常に肩が重く感じるといった症状はなくなりません。骨格を整えることが解決への手段です。骨格を整えれば、その場で解消します。
 「首を回すとゴリゴリいうが、それが気持ちいい」と考えている人もいますが、それは斜角筋が変調していることの現れです。そのままの状態で、頻繁に首をゴリゴリ回したりしていますと、ある日突然「寝違えた」「首が動かせない」ということにもなりかねません。注意してください。

 
参考:お腹の冷えがもたらす身体への影響


タイプA‥僧帽筋・肩甲挙筋の変調によるトラブル
 後頭部や首の後側と肩甲骨を結すんでいる筋肉を僧帽筋といいます。また首の骨(頚椎)と肩甲骨を結んでいる筋肉を肩甲挙筋といいます。頚椎下部や背骨(胸椎)と肩甲骨を結んでいる筋肉を菱形筋(りょけいきん)といいます。この3つの筋肉は肩甲骨と関係しますので、肩甲骨が本来の位置からずれていますと変調を起こします。それによって何もしなくとも、肩甲骨の内側に違和感を感じたり、首や腕を動かすと痛みを感じたりします。
 肩甲骨は専門的に上肢帯といいまして、鎖骨と併せて腕を体幹に結びつけ、腕を自由に大きく動かせるようにする働きをしていますので、腕や手、手指の影響を強く受けます。ですから肩甲骨を体に結びつける筋肉である僧帽筋や肩甲挙筋や菱形筋も手や手指の影響を受けることになります。
 そして、私たちは日常生活においてたくさん手を使いますので、その使い癖や疲労によって僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋が変調することになりますし、肩こりをもたらすことにもなります。

 カバンをいつも同じ手でもって歩いている。ゴルフの練習をしすぎた。パソコンでキーボードを長く使いすぎた。いつもと違う手や指の使い方をした。というようなことによって指や指の付け根あたりが疲労しますと、僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋が影響を受けて、肩甲骨や背中、あるいは腰に不快感を感じたり痛みを感じることがあります。指を使って何か仕事をするときは人差し指、荷物をしばらく持つなどでは小指の付け根が中心になりますので、その二つの指がポイントになるかもしれません。


タイプB‥頚椎の歪みによるトラブル
 首の骨である頚椎は七つありますが、一番上の第1頚椎は頭部の前後の動きの要ですし、二番目の第2頚椎は頭部の回旋(左右を見る動き)の要です。ということは、頭部や首の使い癖によってこの二つの骨は歪みやすいということでもあります。
 テレビの見方や仕事や家庭での顔の使い癖などで同じ方向ばかりを見ているようなことがありますと、そのように頚椎は歪みます。例えば、右ばかりを振り向くことが多ければ、第2頚椎は第1頚椎が右を向きやすいように時計回りに少し回旋したり、左側に出っ張るように歪みます。すると、「首の付け根の辺りの左側が硬くなっていて押すと痛い」という具合になります。
 また、どんな体勢でも脳の働きがしっかりできるように、体は頭をなるべく平衡に保とうとするのですが、そのとき要になるのは第1頚椎です。第1頚椎が歪みますと体はバランスを失いがちになります。そういう意味からも第1頚椎の状態は体にとって、とても大切です。第1頚椎が歪みますと、その下の頚椎、胸椎、腰椎、仙骨と背骨全体に影響を与えることになります。

 「どうも頭がしっかり体に乗っていないような気がする」とか「いつも首の付け根が気になる」というような場合は、この第1頚椎・第2頚椎がずれている可能性があります。第1頚椎は、片噛みの癖などでいつも噛んでいる方にずれますし、目の使い癖によってもずれたりします。その他に、骨盤が歪んだりしてもその影響を受けます。
 首肩のこりが強く、触ってもみて首の筋肉がガチガチの人は、多くの場合頚椎も歪んでいます。ご自分の首を触ってみて、少し押すだけで痛みを感じるようであれば、それは対処する必要があるということです。放っておくのはよくありません。


タイプC‥筋膜のタルミによるトラブル(後頭部〜背中・腰部にかけて)
 ムチウチ症は、頭を打ったり、首がガクンとなったことによる首や頚椎のケガですが、筋が伸びてしまったような筋肉の損傷によるものから、頚椎間をつなぎ止める靱帯が損傷したものまで程度がさまざまです。そして、治療によって首が動かしづらいという状態は回復したものの、いわゆる「後遺症」と呼ばれるスッキリしない症状が長引くことがあります。首のトラブルという自覚症状は解消したけれども、それ以来、背中のハリが気になったり、腰が重く感じるようになったりすることも多いようです。
 ムチウチを経験した人には、首の一番上よりも少し上の後頭部の出っ張り(外後頭隆起)のあたりの筋膜が伸びきってしまった状態で、弛んでいることが多々あります。10年前のムチウチでも、20年前、30年前のものでも、その時ちゃんとケアしていなければ、伸びたままになっている可能性が強いです。
 この部分が弛んでいると、下を向いた状態から顔を上げる動作のし始めが重く感じたり、下を長く見ていることがつらかったりすることでしょう。また、この部分の弛みを補うため、背中のどこかの筋肉がこわばり、それが痛みや不快感となって感じられるようになります。


タイプD‥首筋のこりや姿勢‥ストレートネックなど
 私たちの背骨(脊椎:頚椎・胸椎・腰椎・仙骨・尾骨)は、横から見たとき緩やかにS字にカーブしていますが、頚椎はほんの少し前に膨らむような緩やかなカーブをしています。このカーブがバネのクッションのような役割を果たすため、歩いたり走ったりする際、足が地面から受ける衝撃が頭にダイレクトに来ない仕組みになっていると考えられています。
 ストレートネックというのは、この緩やかなカーブがなくなっている状態であり、脳のある頭部に衝撃や振動が強い状態で到達しますので疲労しやすいですし、頭痛をはじめ様々な不調に見舞われる可能性が高いと考えることができます。
 ところで多くの人の認識に誤解があるようですが、首は一つの骨でできているのではなく七つの頚椎がつながっているわけですから、ストレートネックとは一つ一つの頚椎のつながり方が本来の在り方ではないということです。首の構造そのものがストレートになっているので改善が難しいというものではありません。頚椎のつながり方を本来の在り方に戻せば、ストレートネックは解消する理屈になります。
 首肩のこりが強い人は、ストレートネックに近い状態になっている場合が多いです。おそらく家事や仕事などで下を向いている時間が長く頚椎のカーブが反対になった状態が続くため、首筋もこってしまい、筋肉がカチカチに固まってしまうので正しいカーブが失われてしまうのでしょう。首のこりをとるように揉みほぐしますと、それだけで頚椎のカーブが戻ってくることがほとんどです。
 しかしながら、腰椎と頚椎は同じようにカーブすることが多いので、腰椎の前へのカーブが失われますと、頚椎のカーブもなくなることがあります。ですから普段の座り方の姿勢は大切です。お尻をしっかり立てるような姿勢であれば大丈夫ですが、仙骨が後に寝てしまうような、フニュッとした張りのない座りかをしていますと、腰椎も後にカーブし、頚椎もそのような状態になる可能性があります。
 また、ストレートネックとは反対に、頚椎の前へのカーブが強くなっている人もたくさんいます。いわゆる猫背であるため、首が前に落ちたような感じになっている人です。前から見ますと、首が短く見えてしまいます。これはこれで首の前後の筋肉に負担がかかりますので、やはり不調を招く原因となります。受け口や噛み合わせの不具合などにもつながる可能性があります。


ゆめとわでの対応
 首のトラブルには、上記の七つ以外にも頚椎ヘルニアや頚部脊柱管狭窄症などの病的症状などをはじめもう少しありましょう。病的なものについては、あえてここでは取り上げませんでした。
 首は脳から出る全身の神経の出発点になりますので、とてもデリケートに扱わなければならないと私は考えています。世間では、首の骨をボキボキッと鳴らして揃えてしまえば気持ち良いし、それで良くなるだろう、という思い込みを持っている人も少なからずいます。当店に来店される方の中にも、そのような施術を望まれる人もいます。しかし、それは可能性として「危険がいっぱい」と言わざるをえません。
 頚椎ヘルニア、頚部脊柱管狭窄症、後縦靱帯骨化症などの病的なものを除いて、首が不調になる原因はだいたい上記の五つのタイプに分けられると思います。そしてそれらは、ムチウチなど頚部の直接的な打撲やケガを除いて、根本的な原因は頚部ではなくその他のところになります。そして、その歪みが首までつながってきて首に不調をもたらしているというのが原理です。ですから、その根本的な原因を探し出して、そちらに対処するというのが当店の対応になりますし、それが自然で道理にかなった方法だと思っています。

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