「耳鳴り」と「めまい」について

 耳鳴りの症状をお持ちの人はけっこういらっしゃいます。昼間は周りのさまざまな音に隠れて症状がわからないが、寝るときになると耳鳴りが気になるという人がほとんどですが、そんな人でも一時的に耳鳴りが強くなり、昼間でも気になることもあります。
 中には、耳鳴りとともにめまいの症状も現れて吐き気をもよおすくらい辛くなるということもあります。
 個人的なことで恐縮ですが、私の身内もつい先日、急に耳鳴りとめまいと頭痛と吐き気に襲われ病院に運び込まれました。検査の結果、特に異常も見当たらず、しばらく安静にしているだけで症状はよくなり帰宅しました。病院の先生のすすめもあり、翌日には耳鼻科で検査もしましたが、耳にも異常は見つかりませんでした。
 このように脳・神経的にも、耳鼻科的にも異常がなく、それでも耳鳴りとめまいに襲われ悩んでいらっしゃる人もいます。今回は、この耳鳴りとめまいについて、整体的な面から考えてみたいと思います。

 耳のある側頭骨が大切(整体的な観点から)
    @音を振動に変換し、神経伝達物質に変換する仕組みは側頭骨にあります
    Aめまいを防ぐ平衡感覚のセンサー(三半規管)は側頭骨にあります
    B耳の内気圧を調整する耳管は咽頭鼻部に通じ、鼻骨も関係します    

クリックで大きな写真 耳鳴りもめまいも内耳に関係する症状ですから、耳鼻科的に異常がないと診断されてもやはり中耳や内耳に着目する必要があると思います。 
 耳の構造を見て素朴に考えますと、耳鳴りに関係しそうなのは中耳の鼓膜と鼓室かもしれません。鼓室は鼓膜に伝わった音波を機械的な振動に変換・増幅し、内耳でうまく神経伝達できるようにするところですが、ここには耳管がつながっています。さらに近くを動脈(内頚動脈)が通っています。
 飛行機に乗って離陸直後や着陸手前で高度が上昇したり下降したりするとき、耳鳴りがしたり、耳がふさがったような感じになる時があります。それは、この鼓室の内気圧と外の気圧に差が生じて起こるとのことですが、ツバを飲み込むなどの動作をして閉じていた耳管を開くと気圧差が無くなり症状は治まります。
 耳管は鼓室と咽頭鼻部の間にある管です。耳管は鼓室の気圧に関係しますので、耳鳴りに関係すると考えることができます。また、血圧が高くなったときなど血管が脈打つような状態になると、鼓室のすぐそばを通る内頚動脈の脈動が鼓室に伝わることになります。するとそれだけでゴワン・ゴワンとした耳鳴りの症状が現れるでしょう。また何らかの理由で中耳や内耳が過敏になりますと、血管に血液が流れる音が聞こえる症状が現れたりします。
 めまいに関係するのは内耳にあります三半規管ですが、それはリンパ液のバランスによって平衡感覚のセンサーとなっているようです。ですから、リンパ液のバランスが崩れると平衡感覚がとりづらくなり、めまいの症状が現れると考えることもできます。そして耳鳴り同様、耳管の状態による鼓室の気圧の影響も内耳を圧迫するという意味で、めまいに関わる要素だと考えることができます。
 以上のように耳鳴りとめまいに関して整体的な観点からは、内頚動脈、耳管、リンパというキーワードが浮かび上がってきます。そして、これらに深く関係するのは外耳・中耳・内耳のすべての器官を含んでいる側頭骨になります。側頭骨の位置が本来の位置からずれれば、内頚動脈、外耳道、耳管の状態は影響を受けることになります。さらに耳管は鼻部とも関係しますので、鼻骨の位置も関係すると考えることができます。

@耳鳴りの例‥‥目元のこわばりが鼻骨に影響
 「仕事でのストレスが強くなってきた頃からキーンという強い耳鳴りがし始めて‥‥」という人がいらっしゃいました。ストレスという言葉はあいまいなところがあって、「ストレスが原因で‥‥」となると“心理的なことなのか”、あるいは“自律神経系のことなのか”と、なんとなく理解きるような、よくわからないような、そんな感じになるのではないでしょうか。
 その人の顔をよく観察しますと、目元から頬にかけて硬くこわばっていました。ストレスによって知らず知らずのうちに目元に力が入っていたのでしょう。(こらえる顔やしかめっ面など、あるいは寝ているときに力んでいたか)
 そのこわばりは顔全体の血液循環に影響するだけでなく鼻骨に影響していました。つまり耳管に影響を与えていたということです。そして、ていねいに細かくこわばりを取っていき、鼻骨を整え、さらに側頭骨を整えますと、キーンとしていた強い耳鳴りがその場で弱くなったということです。施術が終わる頃にはほとんど気にならなくなった言って帰られました。
 そして、「目元に力がはいる癖があるので、それを注意し、しばらくは目元の硬いところをほぐすように軽くマッサージしてください。」と申し上げました。
 その後の状況をその人の奥様にお聞きしますと、施術した翌日の朝起きるとまた少し耳鳴りがしたとのことでした。おそらく寝ている間に、目元から頬にかけて力が入っていたのでしょう。しかしそれ以来ここには来られませんから、ご自分のマッサージの効果が現れているのではないかと思います。

Aめまいの例‥‥首のねじれと側頭骨のずれが影響
 仕事がら首を右にまわして右側を見ることがとても多く、いつも頚椎の2番目がずれていて、左肩周りにとても強いこりを持っている人が、ある時、急にめまいと吐き気に襲われました。ひどいときには頭を少し動かしただけでも強いめまいに襲われました。夜、寝返りを打つことも恐怖だと仰っていました。病院で関連する一通りの検査を受けましたが、どこにも異常は見つかりませんでした。そんな状況で来店されました。
 いつも左側の首〜肩にかけて強いこりをお持ちでしたが、この時も非常に強いこりがありました。それをじっくりもみほぐし首の捻れを整えました。そして側頭骨に主眼をおき頭蓋骨を整えました。全身の骨格のバランスも整えました。
 “側頭骨の内耳のリンパのバランス”ということを念頭に考えましたので、全身のむくみの解消というところまで想いは及びます。一度の施術ではめまいが改善されたというところまでは達しませんでしたが、3日後に2回目、そしてまた3日後に3回目と来ていただきました。それで症状はだいぶ良くなりました。その後、2週間に1回の割合で来ていただき、肩のこりをほぐすことと、顔の骨格を調整すること、首を調整することを行っていますが、2ヶ月ほど経つ今では、めまいの症状はすっかり消えているとのことです。
 仕事上、首を右に回して右側を見ることがとても多いため、体はそのように歪んでしまいます。目も右を向くように偏ってしまいますし、首(頚椎2番)もそのようにずれてしまいます。そのため首の左側は強くこってしまいます。そんな体の状態で、通常とは違う要因の疲労が重なってしまったためにむくみが生じて内耳のリンパのバランスが崩れ、三半規管の機能が狂ってしまったのかもしれません。(これは私の個人的な見立てですが)

 また、私の身内の場合を考えますと、一時的な高血圧もめまいに関わってくるのかもしれません。今ではそういうことはなくなりましたが、一時は夕方になると血圧が高くなり、すると耳鳴りが始まり、めまいを伴うことがしばしばありました。耳鳴りがするのは左の耳ですが、そんな時は左側の側頭骨は決まって上にずれていました。その原因を探っていくと、右側の頬に噛みしめのこわばりがあって、それが原因でした。夜中寝ている間に噛みしめてしまうのか、歯ぎしりをしているのでしょう。どうして噛みしめてしまうのか? まだそこまではつかみきれていませんが、無意識に行っているそういう癖はなかなか改善するのが難しいものです。これまでもこの癖によって側頭骨はずれていたのだと思います。そこに、何らかの理由によって一時的に血圧が高くなることが重なり、内頚動脈が脈打つようになり、その振動が内耳に伝わって耳鳴りとなり、三半規管の機能に影響を与えてめまいとなったのではないかと予想します。現在は降圧剤を飲んで血圧を管理しています。夕方になって血圧が高くなるという症状は無くなりましたので、耳鳴りやめまいの症状もありません。

ゆめとわでの対応
 耳鳴りもめまいも耳に関係することなので、耳鼻科あるいは脳神経科の取り扱う範疇のことかもしれませんが、メニエールも含めてまだハッキリしていないことが多いようです。
 ここ(ゆめとわ)は整体の場所ですから、一つ一つの病気に対してどうのこうの言えるところではありません。ただ整体的な観点とこれまでの経験からしますと、骨格をちゃんと整えますとむくみが自ずと速やかに改善されていくことがわかっています。つまり体液のバランスが整うということです。
 その原理を内耳の三半規管の仕組みにあてはめて考えますと、側頭骨が本来の正しい位置に戻るように頭蓋骨や全身の骨格を調整するという手段が方法論としてでてきます。また、耳鳴りに関しては耳管の状態が関係するでしょうから、すなわち鼻骨というキーワードも出てきます。
 極端に申し上げれば、側頭骨・鼻骨・むくみ(リンパ)を整えることによって、自ずと改善される耳鳴りやめまいもあるかもしれないということです。
 病院等で治療を受けながら併行して整体的な手法も取り入れてみてはいかがでしょうかと提案いたします。

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