2011.01.21
睡眠時のトラブルについて

 「布団に入ってもなかなか寝付くことができない」、「夜中に目が覚め、そのまま朝まで眠れない」、「朝起きると疲れている」、「いびき・無呼吸症が気になる」、「歯ぎしりや噛みしめの癖で朝起きると顎が痛い」などなど、心地良い睡眠が得られないという悩みをお持ちの方はたくさんいらっしゃいます。
 精神的に緊張したり、心配や不安を抱えるなど一時的な不眠は仕方がないことだと皆さん思っているわけですが、それが毎日の習慣となり、睡眠薬や睡眠導入剤を飲まなければならない状態になると、「体の何処かが悪いのだろうか?」と病院に足を運ぶようになるのでしょう。
 今回は、睡眠にまつわる様々なトラブルのうち、当店でよく相談される内容や、整体的に改善を見込めることについて考えてみたいと思います。
 「快眠・快便・快食」が肉体に関係する、人生を快適に過ごすための要件です。少しでも多くの人が快眠によって、日々を快適すごせるようになっていただければと思います。

 整体的な面で改善が期待できる睡眠時の代表的なトラブル
  ・布団に入ってもなかなか寝付くことができない。(自律神経的な問題)
  ・布団に入ると足がムズムズしたり、どこかがだるくて眠りに入れない。
  ・歯ぎしりや噛みしめの癖があり、朝起きたとき顎が痛いときもある。
   また朝起きても疲れている。体に力が入ってしまい、リラックスできないようだ。
  ・いびきもあり、無呼吸症が心配。

布団に入ってもなかなか寝付くことができない・・・自律神経との関係

 睡眠は自律神経の支配を受けています。昼間、起きて活動しているときに優位になっているのは交感神経です。夜になって体を休め、眠りを誘い、消化吸収・代謝などの働きに関係する内臓の働きを司っているのは副交感神経です。この交感神経と副交感神経の切り替えが正しく行われないと、心地よい睡眠を実現することは難しくなるでしょう。
 自律神経の切り替えは脳によってコントロールされていますが、交感神経を刺激する内分泌腺があります。それは甲状腺です。私は経験的に甲状腺の働きは少なからず(のど)(首の前面)の状態に左右されていると考えています。
 喉から(あご)にかけての状態は“睡眠時無呼吸症”とも関係があるようですが、首の前面の筋肉や筋膜がこわばっていますと、それは甲状腺を刺激するようで、交感神経が優位の状態になるのかもしれないと考えています。
 交感神経が優位ということは、うまくリラックスすることができない、ということです。実際「寝ていても体が休まらない」と訴える人の喉を触りますと、ガチガチに硬くなっていることが多いです。そして普通は、のど仏(喉頭隆起)と首の一番上の端=顎との境目までは指が1〜2本くらい入る程度の余裕があるのですが、こういう人にはそんな余裕はありません。のど仏の上にいきなり境目があるという状態になっていてます。これは睡眠時無呼吸症の人に多い特徴でもあり、舌が下がっているか、むくんで大きくなっているということでもあります。
 こういう人のこわばった喉をていねいに少しずつ(ゆる)めていきますと、喉のところに余裕が生まれ、顎も本来の位置に戻ります。すると本人はとても楽になってリラックスするようです。私は、これによって交感神経優位の状態が解消されたのではないかと思っています。

 ちなみに、ヨガの世界では、甲状腺は第五番目のチャクラのであり、言語と関係が深いとされています。甲状腺がこわばっているということは、喉を閉めているということにもつながり、心に想いはあっても話せなかったり、しゃべるのを途中でやめてしまうなどの癖を持っているのかもしれません。
 それ以外にも、お腹が冷えたりして胸郭が下がりますと、それにつられて首も下に引っ張られますので、首の前面がこわばるということも原因として考えることができます。



布団に入ると脚がムズムズしたり、ふくらはぎや腕などがだるくて眠りに入れない

 布団に入って眠りに入ろうとすると、脚がムズムズしたり火照ったりして寝付くことができなくなるのは、脳の方の不調(ホルモンの関係など)によるものだという見解が現在の医学界では定着しつつあるようです。それについてはこちらをご覧ください。
 しかしながら、脳とは関係なく膝から下がだるかったり、腕がだるかったりする場合もあります。膝下がだるいという場合は、やはり膝関節に注目することになるのですが、太ももの骨とスネの骨の関係がおかしくて、つまり膝関節が変位していてだるくなっている場合が多々あります。「膝関節が少しおかしいですね」と申し上げますと、「特に膝に痛みは感じませんが‥‥」と応えられる人がほとんどですが、痛みがないからといって膝関節が正しいということにはなりません。脚をいろいろ動かして検査しますとやはり膝がおかしいことがわかります。
 “だるさ”と“むくみ”は兄弟のような関係だと思っています。「通りたいのに通れない」というのがだるさの一つの原因です。また(老廃物などが)「還りたいのに還れない」というのがむくみの原因の一つです。ともに関節で骨と骨の関係がおかしいので、通りが悪いのです。骨と骨の関係を正しい位置に戻しますと、速やかに足先の方まで流れが始まり気持ちよく感じるようになります。
 膝関節と肘の関節は同じような状態になりやすいので、膝下がだるくなるようなときは、肘から先の腕(前腕)もだるくなることでしょう。こういう場合は、脳とか薬やサプリメント、精神的な問題というよりも単に関節が歪んでいるだけだと思いますので、それを直すことをおすすめします。



歯ぎしりや噛みしめ癖、寝ていても体に力が入ってしまう癖など‥‥起きても疲れている。
 寝ている間の歯ぎしり癖や噛みしめの癖によって、朝起きると顎が痛かったり、疲れていたりする人もたくさんいるようです。その他、寝ていても体に力が入っていて「少しもリラックスしている感じがしない」という人もいます。
 最近になって、「睡眠力」という言葉も聞かれるようになりました。「寝るのに力が必要なのか?」と思われる人もいると思いますが、臨床経験からみて、「ある力」が乏しいと快眠が難しいかもしれないと考えています。
 少し筋肉の話になりますが、筋肉線維の仕事は、縮む(収縮)か伸びる(弛緩伸張)かの二つになります。一般的に筋肉の働きが悪いということは、収縮する能力が低い、と解釈されることでしょう。ところが、もう一つ大切な要素があります。それは、よく伸びるが、伸びてなお張りを保つ力があるということです。リラックスするということは筋肉がゆるむことなのですが、ゆるみ放しであるわけではなく、ゆるんだ中にも力を宿している状態であることが「良いリラックス状態」であるということもできます。
 子供たちは寝相が悪く、寝ている間にバタバタ動くのですが、それは体の歪みを自動的に修正するための自然な在り方です。大人も一晩のうちに幾度となく寝返りを打ちます。それも歪みを修正するための自然な行為の一つです。このバタバタ動いたり、寝返りを打ったりするためには筋肉が仕事をするわけですが、この仕事が順調に行える状態でないと「睡眠によって疲労を回復する」ということが上手く行えなくなります。例えば、ペットと一緒に寝ていて、そのペットが体に寄り添っているため寝返りが自由にできない状況になりますと、朝目覚めてもどこかが凝っていたり疲労感を感じたりします。
それは“良い眠り”とは言えません。良い眠りのためには、適度に寝返りを打って歪みを自動修正し、疲労を回復させるように働く力が必要だと考えることができます。そして、この力が、「伸びてなお張りを保つ力」に通じるものだと思っています。

 さて、これまでにも幾度となく取り上げてきましたが、(哺乳動物である)私たち人間の体の中で噛む筋肉(そしゃく筋)は全身の筋肉の司令塔のような役割をしています。何か大きな力を使う時、あるいは手や足などの筋肉が疲労しているのに更に頑張り続けなければならないとき、私たちは自然と歯を食いしばりますが、それはそしゃく筋を収縮させ、必要なところに力を伝えようとしているということです。
 寝ているときに歯ぎしりをしたり、噛みしめたりすること、あるいは体のどこかに力が入ってしまうことなどは、リラックスした状態では伝えたいところに力が伝わらない(エネルギーが届かない)ので、そういう行為によって無意識のうちに力を伝えようしているのではないかと思われます。

 当院では、ご自身の「力のなさ」「頑張れない筋肉」を実感していただくために、手の指を使った筋力テストをよく行います。体の深部のエネルギーの流れに問題があると思われる人は、人差し指には力が入っても、薬指には力が入りません。ひどい場合は、親指と薬指の先を自分の力では合わせることさえできないこともあります。こういう人は歯ぎしりや噛みしめの癖を持っている可能性が高いと思われます。股関節や膝などの関節が正しくないために、そこで血流を含めたエネルギーの流れが停滞してしまうため、「伸びてなお張りを保つ」というリラックス状態をつくることができません。ですから噛むことによってなんとか張りを保つ状態をつくろうとしているのだと思われます。つまり、寝ていても体がヘニャッとならないように最低限の張り感を保っておきたいとする体の無意識下の働きであると考えてもよいと思います。
 早食いや片噛みの癖などを持っていて、普段そしゃく筋をあまり使っておらず、そしゃく筋がたるんでいる人もまた、このような状態になっています。口呼吸の人も薬指には力が入らないので、歯ぎしりなどの癖を持つ可能性が考えられます。

 一般的な人が持っているイメージと実際の体のシステムと違うことなのですが、「力がない」ということを克服するためには筋力トレーニングなどによって筋肉を鍛えることが必要だと思っている人がほとんどです。整形外科のリハビリなどにおいても、そのように考えている傾向があるようです。確かにトレーニングで鍛えることは必要な時もあります。しかしながら、「力がない」ということを「筋力が発揮できない状態である」という考え方をしますと、エネルギーが不足している、という考え方も導かれてきます。エネルギーというと難しそうなイメージですが、それは、温度であったり、血流であったり、気力であったり、電気的なものであったりします。これらのエネルギーの循環がどこかで停滞しているので力が発揮できないと考えますと、停滞しやすいところはやはり関節ですので、股関節や膝関節、足首、手首、肩関節といったところの在り方を確認し、歪みがあれば修正するという方法論が見いだせます。実際、そのようにして歪んでいる関節を修正しますと、その場で、それまで力が入らなかった薬指に力が入るようになります。そして、それを確認して、全身の流れが良くなったのだと、私は判断して問題の解決にあたっています。



いびきや睡眠時無呼吸症が心配‥‥舌の問題

 睡眠時無呼吸症といびきとは深い関係にありますので、いびきを単なるおじさん、おばさんの印みたいに見過ごさないほうが良いでしょう。
 無呼吸の状態があるということは、間欠ではあれ、酸欠の状態が存在するということです。つまり、脳に酸素が届いていない時間があって、脳細胞がパニック状態になっている時間が存在しているということです。放っておけばいつか体の機能に障害をきたし、病気を招く可能性が高いということでもあります。

 さて、右はNHKのためしてガッテンからお借りした画像ですが、無呼吸症には「舌」が深く関係しているということです。
 左側の写真のように顎と首の境目がよくわからないような状態は、舌が大きくなり喉の方に迫っているために起こっているということです。つまり「舌がむくんでいる」ということです。そのため、仰向けで横になったとき大きくなった舌が気道をふさいでしまうため無呼吸の状態がつくられるということです。また、顎と首の関係がこのようになっていなくても、舌に対して顎が小さければ、舌はやはり顎に収まりきれず気道をふさぎやすくなるので、無呼吸になりやすいということです。顎が小さいということは、顎の発達が悪いということでもあり、やはり噛むことと関係してきます。今は、本当にみなさん、食事で噛まなくなってしまったのです。
 整体的な観点で見ますと、これら以外にも無呼吸症になりやすい状態があります。
 舌は筋肉のかたまりですので、やはり“こわばり”や“ゆるみ過ぎ”といった変調をおこす可能性があります。舌筋がこわばりますと、舌は前に出やすくなります。反対に舌筋がゆるみますと、舌は引っ込んでしまい、舌足らずのようなしゃべり方になります。そして舌筋がゆるみ過ぎの状態にあるとき、気道が狭くなりますので、無呼吸症を招く可能性が出てくると考えられます。
 そして、舌筋の変調は顎と舌骨の関係に影響されますし、舌骨の位置は首の前面の筋肉や腹筋の状態とも関係しますので、お腹の冷えなどとも関係することになります。
 さらに、舌が大きい、つまり舌のむくみという点では、それは舌のことだけではなく、上半身や全身性のむくみと関係すると考えられますので、それらを解消するようにしなければなりません。
 東洋医学では、舌は心臓と深い関係にありますので、舌のむくみは心臓のむくみ、つまり心臓肥大にも通じてくるということも考えていただければと思います。
 

参考:NHK「ためしてガッテン」の放送内容
睡眠力がよみがえる    http://cgi2.nhk.or.jp/gatten/archive/program.cgi?p_id=P20090527
睡眠力アップの重大発表  http://cgi4.nhk.or.jp/gatten/archive/program.cgi?p_id=P20101006
睡眠時無呼吸症の死角   http://cgi4.nhk.or.jp/gatten/archive/program.cgi?p_id=P20100623


ゆめとわでの対応
 上記で取り上げた四つの項目が、睡眠に関係してこちらでよく相談される内容です。そして、整体の施療で改善を見込める可能性のあるものだと思っています。但し、睡眠は感情や気持ちといった精神的要素にも作用されますので、身体的な問題の解消だけでは解決に至らない場合もあります。また、反対に肉体的な要素も影響しますので、精神的な問題に的を絞りすぎても解決できない場合もあることでしょう。心と体の両方の面から考えて、対応するのがよいと思います。

 私たちは誰も「癖」を持っています。例えば考え事をするとき、つまり思考を巡らすとき、脳の血流量をアップすることになるのですが、そのためにはスイッチを入れる必要があります。そのスイッチの入れ方が皆さん独特です。首を右にかしげるようにしなければ記憶を思い出すことができなかったり、目を閉じないとイメージが湧いてこなかったり、本当に様々です。そして、それらの行動パターンがやがてその人の癖となり、その癖が体の歪みを生み出すようになります。しかし体はよくできていて、多少歪みが生じても、一晩休めば自動的にその歪みを修正してくれます。睡眠とはそのための時間でもあるのです。
 ところが、その癖が加齢と共に強くなり頑固になってしまうと、歪みも同様に頑固になってしまい、睡眠で歪みを自動修正できる範囲を超えてしまうのでしょう。すると歪みが常に残っている状態になるので、その歪みに合わせて体はバランスをとりますので、それがやがて様々な愁訴や不調へとつながっていくのでしょう。

 ここでは、体の歪みを修正することはすぐにできます。ところが、体に歪みをつくることになった元々の癖が修正されなければ、またすぐに体に歪みが生じてきます。
 元々の癖を認識し、それを少しずつでも改善するように心がけていただければ、やがて歪みは自ずと解消していきます。
 例えば、首を右にかしげなければ考え事ができないという場合、それを肉体的に分析します。もしかしたら首の右側の筋肉にゆるみ過ぎの変調があって、それが脳の働きを弱めているので、首を右にかしげ筋肉を収縮させることで変調が解消でき、脳の働きが活発になるのかもしれないと考えてみます。すると、首の右側にあるゆるみ過ぎの変調を解消する施術を行えば、いつも脳はよく働くことができる状態になるので、考え事をするとき、首をかしげる必要はなくなるのかもしれないと方法論が導かれてきます。そして、そこまで追求していくのが、ここでの整体になります。

 睡眠時のトラブルを招いているであろう体の歪みを修正し、その歪みをもたらしているその人の癖を指摘することで注意を促し、さらに、その癖をもたらしている原因となるであろう要素を取り除き、それを認識してもらうところまでが、当院の役割だと思っております。

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